CUDIORA JOURNAL / SITE RENOVATION · PRACTICE

AI時代、企業サイトの
リニューアルに
何を求めるべきか。

社員がブログを書く企業へ。
制作方法より、情報の設計に費用をかける。

企業サイトのリノベーションを表現したビジュアル

フルスクラッチか、既製テンプレートか。2026年春まで合理的だった制作費の区分が、コーディングAIの進化で揺らぎ始めています。実際のサイトリノベーションの経験から、中小企業の発注判断を考えます。

01 / WHAT CHANGED

変わったのは、コードを書くための手間

独自のレイアウトを作るには、HTML・CSS・JavaScript・PHPなどの知識と作業時間が必要でした。既製テーマはその負担を減らす合理的な選択肢でした。

今はAIがコードの生成、既存ファイルの読解、レスポンシブ調整、修正案の作成を支援します。だからといって、制作費が一律に下がると断言はできません。動作検証、アクセシビリティ、セキュリティ、保守の責任は残るからです。

従来、価格差を生んだ工程

独自レイアウトの実装、スマートフォン対応、WordPressへの組み込み、修正の反復。

今も人間が担う工程

顧客理解、情報の取捨選択、ページ間の導線、品質の確認、公開後の運用判断。

「何で作るか」だけでは、制作費の根拠を説明しにくくなった。

02 / BLOG × LANDING PAGE

ブログの内製化は、AI以前からできていた

WordPressなら、社員が写真と文章を用意してブログを投稿する仕組みは以前からありました。問題は記事を公開できるかではなく、増えた記事を企業のサービスや専門性とどう結びつけるかです。

例えば設備会社が「交換時期」「修理と更新の比較」「補助制度」の記事を蓄積しているなら、記事群を受け止めるサービス説明の固定ページが必要になります。LPは派手な広告ページでなくても構いません。

サービスLP(WordPress固定ページ)
業務用設備の更新支援
交換時期の記事 修理と更新の比較 補助制度の記事

記事とLPを相互に結びつけ、個別情報からサービス全体へ導く

AIは固定ページの実装を容易にします。しかし、何を一つのLPにまとめ、どの順序で伝えるかは、企業の事業と顧客を理解したうえで決める必要があります。

03 / AN ACTUAL RENOVATION

10年前の公式サイトを、あえて作り替えなかった

ある企業の公式サイトは、約10年前に独自開発されたWordPressサイトでした。部分的には更新できても、既存コードを不用意に触ると表示が崩れ、修復に手間がかかる。そこで情報発信のため、既製テーマを使った特設サイトを追加してきました。

コンテンツは増えましたが、今度はサイトごとにメニューやデザインが異なり、一貫した動線を作れないという問題が生まれました。AIのコード解析・修正能力が向上したことで、この構造に手を入れられるようになりました。

そこで私が決めたのは、公式サイトの基本的なデザインとトーン&マナーをあえて変えないことでした。10年間使われた独自の雰囲気を、流行のデザインに置き換える必要はないと考えたからです。

一方、特設サイトではサービスブランドごとの自由な表現を進め、現代的なデザインの固定ページを追加しました。そして、異なるサイト間のメニューと情報の動線を一体化しました。

公式サイトでは継続性を守る。特設サイトでは変化をつける。統一したのは、見た目ではなく動線。

結果として、公式サイトの印象を大きく変えずに、全体の構造と細部を更新することができました。これが今回の「サイトリノベーション」です。

04 / WHEN TO REDESIGN

デザインを全面的に一新した方がよいサイトもある

ただし、今回の判断が、どの企業にも当てはまるとは考えていません。古いデザインを残すこと自体が目的ではないからです。

例えば、事業内容や顧客層が大きく変わったのに、サイトが以前の企業像を伝え続けている場合。会社としての強みが変わったのに、トップページでは昔のサービスばかりが目立つ場合。あるいは、見た目の古さが、現在の企業の技術力や信頼性を適切に伝えるうえで障害になっている場合です。

こうしたサイトなら、基本的なデザインやトーン&マナーから見直した方がよいでしょう。また、スマートフォンで読みにくい、情報の優先順位がわかりにくい、操作しづらいといった問題は、単なる好みではなく利用者の不利益です。部分修正では十分に解決できないなら、全体の再設計を選ぶ理由になります。

ただし、デザインを刷新する場合でも、長年蓄積された記事や評価されているページまで捨てる必要はありません。コンテンツの取捨選択、URLや内部リンクの扱い、検索流入への影響は、見た目の変更とは分けて判断できます。

残すことも、一新することも、目的ではなく、企業の今を正しく伝えるための選択。

今回の事例では、公式サイトのデザインに残す価値があると判断し、変化は特設サイト側に担わせました。別の企業なら、公式サイトそのものを大きく変えるという結論になるはずです。重要なのは、流行や制作の都合で決めず、何が企業の価値を伝える妨げになっているかを見極めることだと思います。

05 / PAID THEMES

AI時代に、高機能な有料テーマを使い続ける理由はあるか?

既製テーマは、専門技術がなくてもページを作れるという点で価値がありました。しかし、テーマ固有のレイアウトや機能に合わせる制約もあります。AIで独自の実装が容易になるほど、その制約を受け入れる理由は小さくなります。

残る価値は、更新・保守の容易さ、管理画面の使いやすさ、サポート、検証済みの品質などでしょう。SEOやAI検索についても、テーマ名そのものではなく、公開されるHTML、内部リンク、表示性能、構造化データ、コンテンツの品質を確認すべきです。

私自身、以前は便利だと感じていた有料テーマについても、今後の継続利用を見直すようになりました。利用条件が厳しいなら、なおさら独自実装との比較が必要です。

06 / THE ESTIMATE

見積書では、制作方法より作業内容を見る

フルスクラッチだから高額、テンプレートだから安価。それだけで判断せず、どの工程に工数と責任が発生するかを確認したいところです。

情報設計には、何が含まれているか

既存記事の棚卸し、サービスLPの設計、メニュー構造、内部リンク、残すページと整理するページの判断。これらが見積もりに含まれているでしょうか。

完成後、どこまで社内で変えられるか

ブログ投稿だけでなく、新しいLPの追加、既存ページの変更、事業内容に合わせたメニューの再編まで想定しているでしょうか。

品質を、誰がどう確かめるか

表示確認、バックアップ、更新時の不具合対応、検索エンジンへの公開設定などを、誰が担当するのか。AIを使うからこそ、検証と責任の所在は明確にしておきたいところです。

07 / DIRECTION

集客サイトのコンテンツ制作を内製化するなら、判断が重要になる

AIを使えば、以前より容易にページを増やせます。しかし、目的の曖昧なLPが増えれば、サイトは再び複雑になります。ブログ記事が増えたときと同じ問題です。

何を残すか。何を統合するか。何を新たに作るか。どの読者に、どの順序で情報を見せるか。これらはコードの問題ではありません。

制作会社やディレクターに求める価値も、単にページを作る能力から、企業の事業と顧客を理解して情報を設計する能力へと比重が移るでしょう。ただし、複雑な開発や保守の専門性が不要になるわけではありません。

08 / CONCLUSION

サイトリニューアルは、情報資産の再設計へ

社員が書いてきたブログ、長年使われてきたデザイン、サービスごとに蓄積されたページ。それらを一度捨てて新しく作ることだけが、リニューアルではありません。

AIの進化で、既存サイトを活かしながら必要な部分を作り替える選択が、以前より現実的になりました。

制作費を考えるときも、まず問いたいのは「どんな技術で作るか」ではなく、「何を伝えるために、何を変えるか」です。

AIで「どう作るか」は容易。だからこそ「何が必要か、見た目だけではないコンテンツ構成と見せ方=サイトディレクション」が重要。

見た目のデザインを一新するだけなら、もはや、多額の費用も不要で、極論すれば、AIさえ使えれば誰でもできる時代です。
そのサイトの目的は何か、どのような人に刺さるサイトにしたいのか、そのために必要なコンテンツは何か、それをどのような順番で、どのような見せ方で伝えるのか?
そのディレクションができるのは、その企業のビジネスへの理解があるかどうかであり、デザインやコーディングのプロに丸投げするだけでは、本来目指すべきサイトにはなりません。